後宇多院に仕える臣下が勅命によって男山八幡宮に参詣します。初卯の祭りで賑わう人々の中に、若い男を伴い、弓を錦の袋に包んだ老人が現れ、これを帝への捧げ物と言い、臣下に渡します。袋から弓を出そうとする臣下を制し、桑の弓と蓬の矢にて世を治めた神代のことを語り、泰平の世に弓は不要なので納めるのだと説明します。自らは八幡宮の末社の神「神良」の神であると告げて夜神楽を待てと言って消え失せ、夜半に颯爽と舞を舞って御代を寿ぎます。
一ノ谷の戦いで平忠度を討った岡部六弥太は、忠度が身に着けていた箙に、辞世の歌が付けられていた矢を見つけ、忠度の和歌の師である藤原俊成を訪ねて来ます。六弥太から矢を受け取った俊成がその歌を詠みあげ、忠度を懐かしみ、いたわしく思っていると、忠度の霊が在りし姿で現れます。忠度は「千載集」に自分の歌を取り上げてもらったことへの感謝と、作者の名が詠み人知らずになっていることへの恨みを告げますが、俊成に説得されて去って行きます。
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安居院の法印は石山寺の観世音を深く信仰し、常に参詣していましたが、ある時若い女に呼び止められます。女は石山寺へ行くのなら源氏の供養をして欲しいと頼み、自分も供養の場に立ち会いますからと言って姿が見えなくなります。法印は、女は源氏物語の作者、紫式部であろうと察し、石山寺にて供養を始めると、先程の女が紫の衣装をまとい現れます。式部は源氏物語の巻名を詠み込んだ文章に合わせて舞を舞い、供養に感謝して舞終わります。
帝の霊夢によって剣を打つ事を命ぜられた三条小鍛冶宗近は、自分に比肩する程の相槌がいないことに困り、氏神である稲荷明神に詣でます。そこに現れた童子は、帝から宗近に勅諚があったことを既に知っており、名剣の謂われを語って宗近を励まし、剣を打つ台を用意して待て、必ず助力のために参上すると約束して去ります。宗近が待っていると稲荷明神が神狐となって現れ、協力して剣を打ち上げます。小書「白頭」は、後半の常の赤頭が白頭に変わり、面も変わり、重厚な演出になります。
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