九月 宝生会定期公演

◇午前の部◇2025年9月20日(土)11時始

能「呉服」

時の帝に仕える臣下が、住吉の明神に参詣の帰り、呉服の里を通りかかると、唐風の装いをして機を織る二人の女性に出会います。一人は機台に腰掛けて機を織り、いま一人は傍にいて補助をしています。二人は呉織(くれはとり)漢織(あやはとり)と名乗り、応神天皇の御代に日本に織物を伝えた事などを語ると消え失せ、夜になると美しい舞姫となって現れ、舞を舞います。小書「作物出」が付くと、前半で五色の糸を掛けた美しい作り物が出、後半で常は後シテが一人で舞うところを、同装のツレとの相舞になります。

シテ 佐野玄宜


能「経政」

御室仁和寺の僧都行慶は、守覚法親王に命じられ、一の谷で戦死した平経政の為に、愛用の青山という琵琶を仏前に据え、管弦講の弔いを行います。夜半になり、燈の中に生前の姿の経政の霊が現れ、守覚法親王の特別な配慮により青山の琵琶を愛玩することを許された礼を述べ、安置してある琵琶を奏でます。仁和寺を懐かしみ、夜遊の名残を惜しむ管弦の内に、修羅の苦患が襲い来たり、修羅道の戦いに落ちた自らを恥じて、最後に燈を吹き消して去って行きます。

シテ 藤井秋雅

狂言「萩大名」

訴訟事のため永らく在京していた大名は、都の名残に遊山に出掛けようと太郎冠者に相談します。太郎冠者は、宮城野の萩が盛りの庭を見物する事を提案しますが、その庭の持ち主は大の歌好きで、必ず見物客に歌を所望すると云います。歌を詠む嗜みのない大名に、太郎冠者は一計を案じ、和歌のカンニング法を伝授しますが・・・。 無知な大名を風刺にした面白い演目です。 「七重八重九重とこそ思いしに十重咲き出る萩の花かな」

◆午後の部◆2025年9月20日(土)15時半始

能「蝉丸 舞入」

延喜帝の四番目の皇子「蝉丸」は盲目の身と産まれたために、帝の命で臣下に付き添われ、逢坂山に行くと、出家させられた上捨てられてしまいます。蝉丸に同情した博雅三位は庵を用意して住まわせ、蝉丸も琵琶を弾いて過ごしている所に、三番目の皇女逆髪が通りかかります。やはり生まれつき髪が逆さまに生える奇病を持った姉宮「逆髪」は、狂人となって山野をさまよっていたのです。束の間の再会を喜ぶ二人でしたが、別れの時になり逆髪は去り、蝉丸は一人逢坂山に取り残されるのでした。

シテ 大坪喜美雄


能「大会」

西塔に住む僧を山伏が訪ねて来ます。山伏は僧に危ういところを助けられ、その礼がしたいという。山伏は実は天狗であり、どんな望みでも叶えるという山伏に、僧は霊鷲山にて釈迦の説法の様子が観たいと言います。山伏は観せてやるが、心から信心を起こすなと念を押し、姿を消します。僧が眼をふさいで待つと、虚空に音楽が鳴り、眼を開けた僧の前に、釈迦になりすました天狗が現れます。思わず僧が一心に祈ると、俄に様子が変わり帝釈天が天下って天狗の正体を暴き、散々に懲らしめて去っていきました。そして天狗も深山の岩間に落ちて行きます。

シテ 内藤飛能

狂言「二九十八」

男は妻請をしに清水の観世音へと向かいました。そこで「西門の一の階に立った人を妻に定めよ」という夢のお告げを受けます。男が西門に到着すると、被を被った女性が静かに佇んでいました。男は歌を詠み、女性の宿を尋ねると、彼女は「ニ九」とだけ告げて立ち去ってしまいます。男はその「ニ九」を手がかりに、女性の宿を訪ねると、先ほどの女性が待っていました。婚礼の盃を交わし、被を取って対面しますが…。