十二月 宝生会定期公演

◇午前の部◇2025年12月20日(土)11時始

能「絵馬」

帝に仕える臣下が伊勢神宮に参詣すると、暗闇の中に白馬の絵馬を持った老人と黒馬の絵馬を持った姥が現れます。臣下が問うと二人は来年の日を占う神事であると答え、日光を乞う白い絵馬と、穀雨を乞う黒い絵馬を今年は初めて同時に掛け、伊勢の二神と正体を明かして消え失せます。やがて天照大神が女神男神を従えて現れ、颯爽と舞を舞った後、宮に隠れ、男女二神の舞う神楽に惹かれるように再び現れる、という天岩戸神話の故事を再現します。

シテ 和久荘太郎


能「夜討曽我」

曽我十郎、五郎兄弟は頼朝が招集した富士の巻狩に、父の仇工藤祐経を討つため参加します。五郎の提案で夜討にかけることを決めた二人でしたが、故郷を出るとき母に何も言わずに来たことを思い出し、従者の団三郎と鬼王に形見を持たせて故郷に返そうとしますが、兄弟に殉じようと思う二人は納得せず、自害しようとまでします。それを五郎が押しとどめ、遂に説得された従者は故郷へ帰り、後を見送った兄弟はその夜夜討ちを掛けついに仇を討ちますが、十郎は討たれ、五郎も格闘の末、生け捕られてしまいます。

シテ 藪克徳

狂言「酢薑」

薑(はじかみ(生姜))売が京都に商売に行く途中、酢売に出会います。互いに商う物がいかに由緒正しいかを示すため、薑売は薑が辛い事に掛けて「カラ」の音、酢売は「ス」の音を織り込んでそれぞれ由緒を語りますが勝負がつきません。そこで都への道中、秀句(=しゃれ)を言い合う事で決着をつけようとしますが…。 洒落のきいた、和やかさが漂う狂言です。はじかみ売りと酢売りのテンポの良い掛け合いをお楽しみ下さい。

◆午後の部◆2025年12月20日(土)15時半始

能「野宮」

嵯峨野の野宮を訪ねた僧が、光源氏と六条御息所の事を懐かしんでいると、一人の女が現れ、今日は昔源氏が初めて御息所を訪ねた大事な日であるから、立ち去るようにとたしなめます。女が持つ榊の枝を見て僧が二人の歌のやり取りを思い出して言葉をかけると、女は光源氏と六条御息所の在りし昔を詳しく語り、御息所の幽霊である事を明かして消え失せますが、その夜再び美しい姿となって現れると、車争いの有様を見せ、舞を舞い、執心の車に乗って去って行きます。

シテ 金井雄資


能「車僧」

人も牛も引かないのに、法力で自在に車を操る「車僧」と呼ばれる僧がいました。愛宕山に住む天狗の太郎坊は、山伏姿でからかい半分に禅問答を仕掛けますが相手にされず、愛宕山の我が庵室で待っていると言って去って行きます。その後太郎坊の眷属、溝越天狗が現れ、師匠の仇とばかり車僧を笑わせようと奮闘しますが、やはり一蹴されて逃げ帰ると、太郎坊が天狗の本体を現します。太郎坊は車僧を魔道へ誘い、行比べを挑みますが、やはり歯が立たず、「あら貴っとや恐ろしや」と退散します。小書「白頭」は、後シテの赤頭が白頭に変わり、全体が重くなります。

シテ 辰巳和磨

狂言「茶壷」

栂尾(とがのお)で茶を買い求めた男が、知人の家で酒を振舞われ、すっかり酔っ払って茶壺を背負ったまま街道で寝込んでしまいます。そこへ通りかかったすっぱが茶壺を盗もうと、さも自分が茶壺を背負っていたかのように見せかけて背中合わせに横たわります。目が覚めた男とすっぱがそれぞれに茶壷は自分の物だと言い争うところへ、目代(代官)が通りかかり、二人の言い分を聞きますが、どちらとも判断がつきません。そこで目代は…。  茶の産地や明細などを謡い舞うすっぱと男の連舞が見どころ。いつまでも勝負がつかないかと思いきや、最後はアッと驚く結末が待っています。ご期待ください。