津の国難波の里に、貧しさ故に別れた夫婦がいました。妻の方は都へ行き、さる方の若子の乳母となり、生活に余裕も出来たので、故郷に別れた夫を捜しにやって来ます。夫の日下左衛門の行方を尋ねますが、土地の者は知らぬと答えます。さらに行方を捜していると、そこに芦売りの男が現れます。男は芦が難波の名物で、葦と芦は同じ物であると語り、御津の浜の謂れから笠を使った舞を舞います。二人はお互いに気付き、夫は身を恥じて去ろうとしますが、妻の心情に打たれ、衣服を改め、舞を舞い、一緒に都に帰って行きます。
安房の清澄から来た二人の僧は、甲斐の国石和川にさしかかり、村人に宿を借りようとしますが、禁制とてかなわず、洲先の無人の堂に泊まります。そこへ松明をかざしながら老人が現れます。老人は石和川の鵜使いで、数年前にこの老人に会った僧がその折の事を話すと、その鵜使いが死んだ事を告げ、詳しい経緯を語り、自らその霊であると明かし弔いを頼んで鵜を使う様を見せて消えて行きます。僧が弔っていると閻魔大王が現れ、一僧一宿の功力によって鵜使いを助け、法華経の功徳を讃えて去って行きます。
源義経は平家を滅ぼした後、兄頼朝と不仲になり、奥州の藤原秀衡を頼って身を寄せていました。ところがその秀衡の死後、長男錦戸太郎は頼朝の意を汲み、義経を討つ事を決心し弟泰衡とも同心して、三男泉三郎を説得するため屋敷にやって来ます。三郎は親の遺言を盾に兄達に反対し、錦戸は怒って帰ってしまいます。母からの文で兄達が攻めて来る事を知った三郎は、妻を自害させた上で、自宅で奮闘しますが、最後には捕えられてしまいます。
芦屋の里に住む公光という人は、伊勢物語を愛読していましたが、ある夜霊夢を得て、都北山の雲林院にやって来ます。あまりに美しい桜を愛で、一枝折ろうとしたところを老人に咎められ、言葉を交わし霊夢の話をします。老人は夢の続きを見給えと言い、何となく在原業平の事を仄めかして消え失せ、その夜の夢に美しい貴公子の姿で現れます。業平は高子の后との恋の物語を語って、優雅な舞を舞い、夢が覚めると共に儚く去って行きます。
太郎冠者の無断欠勤に怒った主人は、次郎冠者を供に連れて、太郎冠者の家に乗り込みます。調子のよい太郎冠者は、さまざまな手で居留守を使います。太郎冠者を叱りに行ったはずの主人、しかし「平家節」「小唄節」「踊り節」など太郎冠者が次々繰り出す楽しいメロディとリズムについ引き込まれ、怒りも忘れ夢中になって三人で浮かれてしまうのです。謡の芸づくしの応酬で舞台は広がり、思わぬ展開をむかえます。