美濃の国に薬の水が出たということを聞き、帝は調べて来るよう臣下に命じます。臣下は老人と水桶を持った若い男に出会い、謂れを聞くと、何気なく飲んだ滝の水が爽やかだったので、家まで運んで親に飲ませたところ、とても元気になったことから、老いを養う滝という名になったことを聞きます。
親子は薬の水の出どころを教え、尚も古今のめでたい水の謂れを語り、臣下の前から去って行くと、妙なる音楽が聞こえて山神が現れ、爽快な舞を舞います。
光源氏の正妻葵上は得体の知れない病で臥せっていました。「もののけ」が憑いていると考えた朱雀院の臣下が巫女に梓の弓を引かせると、弓の音に惹かれて高貴な女性の生霊が現れます。臣下がおおよそ名はわかっているが、名乗り給えと請願すると、女性は六条御息所の怨霊と名を明かすと、源氏をめぐって嫉妬の心が強く沸き上がり、また賀茂の祭りでの車争いで恥をかかされことを恨み、冥界に連れ去ろうとします。そこで、横川小聖が呼ばれて祈祷が始まると、鬼の姿となった御息所は祈り伏せられ、ついに成仏して去って行きます。
小書「梓之出」は、巫女が梓の弓を弾くという事に因んで、前シテの出が常の「一声」から特殊な囃子に変わり、型も変わります。
太郎冠者と次郎冠者は、主人から少人(稚児)に宛てた恋文を届けるよう命じられます。二人は道々文を押し付け合いますが、なかなか進まないので文を竹竿に結び二人で担ぐことにします。能『恋重荷』の一節を謡いながら運んでいくと、何故か文が重く感じられます。中身の気になる二人は、とうとう文を開けてしまい…。
越後国柏崎で夫の留守を守る妻のもとに、夫と共に鎌倉にいるはずの家臣小太郎が帰って来ます。小太郎は、主人柏崎殿が病死したこと、一子花若が文を残して出奔したことを伝えます。文を読んだ母は我が子の行方を尋ねて越後を出、信濃の国善光寺へ向かいます。善光寺の如来堂の内陣に辿り着いた母は僧に咎められますが、持参した夫の形見の衣と烏帽子を身に着けると夫の後生を祈り舞を舞います。偶然にも善光寺で修業していた花若と母は、僧の計らいでめでたく再会し、連れ立って柏崎へ帰って行くのでした。
「舞入(まいいり)」の小書では、クリの前「扇おっとり鳴るは滝の水」の後に「中之舞」が舞われます。
「大返(おおがえし)」は「頼もしや。頼もしや。」の間に囃子方による短い演奏が入ります。
都東山の泉涌寺に納められている仏舎利を拝む為に僧がやって来ます。寺男に案内させ、僧が仏舎利を拝んで感涙を流していると、寺近くに住むという男が現れ一緒に拝みます。二人で仏法東漸の事や、霊鷲山の事などを話すうち、俄かに空はかき曇り、稲妻が光ると、男の面色が変わり、そもそもこの仏舎利は昔足疾鬼が奪ったものだと言って舎利殿に飛び上がり、仏舎利を掴むと天井を蹴破って消え失せます。寺の守護神韋駄天は足疾鬼を追って現れ、天上界から下界まで追いつめ遂に仏舎利を取り返します。
近々都から帰国することになった田舎大名が、太郎冠者の案内で、とある庭園に萩の花見に出かける。風流者の亭主が来客に必ず一首所望することを知っている太郎冠者は、聞き覚えのある歌を大名に教えておく。無骨者の大名は失言を重ねてしまうが、いよいよ歌を詠むことになる。すると大名は…。
秋の風情豊かな庭を舞台に、無邪気な大名と繊細な和歌の世界のギャップが笑いを誘います。