住吉詣でを志す西行法師は、旅の途中一夜の泊りを求めます。その家の老人夫婦は、初めは宿をことわりますが、なにやら別に仔細の在るようす。西行が尋ねると、翁は雨音がききたいので屋根の庇を葺こうといい、媼は名月を見たいので庇を葺くまいという風流な問答でした。この問答を見事な歌で解決した西行は泊めてもらうことになり、その夜の夢に翁は住吉明神の本体を現し、舞を舞い、和歌の徳を讃えて去って行きます。
玄宗皇帝は最愛の楊貴妃を失い、悲嘆のあまりその魂魄のありかを訪ねて来るようにと、方士に命じます。あちらこちらを探した方士は遂に蓬莱宮に至り、ここでやっと楊貴妃に巡り会い、楊貴妃亡き後の帝の嘆きの深さを伝え、確かに楊貴妃に会った事を帝に奏上するため形見の物をと玉の冠を一度は受け取りますが、二人しか知らない契りの言葉を望みます。妃は七夕の夜に交わした言葉を教え、冠を着けると昔を懐かしんで舞を舞い、再び冠を賜った方士が帰って行くのを一人見送ります。小書「玉簾」は作り物の宮の三方に葛帯を簾のように下げ、「玉の簾をかかげつつ」と本文通りの風情を見せます。
大江定基は出家して寂昭法師と名乗り、唐に渡り清涼山に至り、文殊の浄土へ懸かる石橋のもとに着きます。そこに通りかかった樵童は、寂昭が渡ろうとするのを止め、橋の謂われを語り、渡ることの困難さを示し、やがて奇瑞を見ることになるだろう、暫くここで待てと告げて去って行きます。すると荘厳な音楽が始まり、文殊菩薩の霊獣である獅子が現れ、豪快に獅子舞を舞います。
坂東方の者が名刀「長光」を手に、大津松本の市を見物していると、すっぱ(詐欺師)に目をつけられ、刀を盗られかけてしまいます。これは自分の刀だと二人が争うところに、所の目代(役人)が止めに入り、代わる代わる事情を聞くのですが、不思議なことに二人とも同じことを言います。一計を案じた目代は、坂東方の者に太刀の寸法を尋ねるのですが・・・