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文化芸術復興創造基金助成事業を活用した事業のご報告

2022.1.13

公益社団法人宝生会(宝生能楽堂)では、この度の助成金を活用して下記の事業を行いました。

1.能装束の新調
能楽界も、新型コロナウイルスの感染拡大により公演の興行収入が激減した状況にある。
弊会で所有する能面・能装束等は舞台で使用する道具でありながら、文化財や重要美術品としての価値も持ち合わせているため、維持管理が不可欠である。
団体の収入が減少した状況の中、助成を受けることで維持管理費を確保し、これらを後世に継承していくことができる。
このような状況下では、能面・能装束制作の職人においても、その職の維持自体に影響している。
今回、以下2件の発注を行うことにより、職人の技術の継承や生活基盤の確保へ繋がることも期待される。

(佐々木能衣装)
「紫地七宝龍麒麟模様半切」
《邯鄲》、《咸陽宮》、《枕慈童》などで使用。

(のむら)
「紫地業平菱に亀甲笹模様狩衣」
《絵馬》、《加茂》、《高砂》などで使用。
「紺紅段毘沙門亀甲に輪宝雲板模様厚板」
《田村》、《八島》、《箙》などで使用。

いずれも多くの曲で使用できる使用頻度の高い装束のため、消耗しやすい種類のものである。
本助成により装束を新調し、舞台道具の補填・文化財の保存・職人の雇用支援等の効果が見込まれている。

※画像はイメージです。

2.公演のオンライン配信

9/24(金)に上演された夜能「清経」をはじめ、夜能3公演と五雲能1公演がオンライン配信された。
様々な理由で能楽堂に来られない方も能楽に触れることができ、オンラインならではの工夫をすることで観客層の拡大も期待される。
①夜能
声優/俳優が語り手となり、気鋭の脚本家/作家が能のストーリーをもとに書き下ろした脚本を朗読したとに能楽を観ることで、能楽初心者でも能のストーリー、見どころ、面白さを理解しながら鑑賞できる。
これまでに多かったアカデミックな解説ではなく、プロの語りとプロの能を楽しむ新しい公演スタイルである。
②いとうせいこうの能楽紀行
作家/クリエイター・いとうせいこうと、能楽師・澤田宏司が、「行かずして名所を知る」ことができる能の名跡をトークで紹介する。その後、能を観ることで土地についての理解が深まり、能の世界を想像しやすくする。

公演の収録と配信には多大な予算がかかり、通常では実施が厳しいが、本助成により新しい生活様式に沿った、挑戦的な取り組みも実施することができている。