四月 宝生会定期公演

◇午前の部◇2025年4月19日(土)午前11時始

能「蟻通」

玉津島に参詣した紀貫之は、帰り道急な雨に遭い、何故か馬まで臥してしまう。そこに傘を差し松明を持った神主の老人が現れ、馬が伏してしまったのは、ここが蟻通明神の門前であり、下馬せずに通ろうとしたためであるとたしなめます。そこで貫之は「ありとほし」の言葉を巧みに盛り込んだ和歌を詠み、神に捧げると雨も止み、馬も元通りに立ち上がります。神主は和歌の徳を称え、神楽を奏し、蟻通明神は我なりと名乗って、鳥居の陰に立ち隠れるようにして去って行きます。


能「祇王」

平清盛の寵愛を一身に受ける白拍子の祇王御前は、後から都にやって来た仏御前に会おうとしない清盛を許さず、出仕を控えていたところへ、二人共清盛のもとに参上するようにと瀬尾太郎が迎えに来ます。二人は揃って出仕し、仏御前の願いも叶ったので、改めて舞を舞うために一度退場し、同じ衣装と同じ金の立て烏帽子を身につけて登場します。中之舞、曲舞を舞い、人心が移っても友情は変わらない事を誓い合います。美しい二人の舞姫の相舞が見ものの小品。


狂言「文山賊」

二人の山賊がねらった旅人を逃したことから仲間喧嘩となり、挙げ句にだれも見物人のいないところで死ぬのは残念と書置(遺書)を書くことになり、その中味が残された妻子の将来に及んだところで感情が激して二人とも泣き出し、仲直りして連れ立って帰ってゆきます。愛すべき山賊たちです。※大蔵流では文山立と書きます。

◇午後の部◇2025年4月19日(土)午後3時半始

能「兼平」

木曽から来た僧が琵琶湖の矢橋で粟津へ渡る為に船を待っていると、渡し船では無いが柴を積んだ船が来かかり、乗せてもらおうと声を掛けます。始めは拒んだ船頭でしたが、僧を船に乗せることの功徳を説かれて思い直して僧を乗せて琵琶湖に漕ぎ出します。僧の求めに応じて船頭は名所の数々を教え、粟津に着くと同時に消え失せてしまいます。実は船頭の老人は粟津で死んだ今井四郎兼平の霊で、その夜再び現れ、義仲と自らの死を語り、弔いを頼んで消え失せます。


能「海人」

藤原淡海公の子、房前の大臣は自分の母の出自について詳しく知るために、讃州志度の浦へ赴きます。そこに現れた海人は臣下の問いに詳しく答え、唐土から贈られた三つの宝物のうち、「面向不背の珠」という宝を竜宮に取られてしまい、それを引き上げて亡くなった海人こそ房前の母であったと告げ、珠を取り返した様子を見せ、母の幽霊と名乗って海中に消えます。房前が追善供養を行うと、母が龍女の姿で現れ成仏を喜びます。


狂言「蟹山伏」

山伏と供の強力が、故郷の羽黒山への帰路に向かう道中、にわかにあたりが暗くなり不穏な雰囲気に包まれると、突然目の前に得体のしれぬ化物が姿を現し、二人は進路を塞がれてしまいます。その正体は蟹の精。そうと知ると強力は、金剛杖で蟹の精を打ち据えようとしますが、返り討ちにあってしまいます。そこで山伏は、蟹の精を調伏しようと祈祷を始めますが…