四月 宝生会定期公演

◇午前の部◇2025年5月17日(土)午前11時始

能「吉野静」

吉野山に隠れていた義経一行は、衆徒が心変わりしたという報を受け、夜陰に乗じ落ちのびて行きます。残った宗徒が追手をかけるべきか相談している座敷に、都道者が紛れ込んで来ます。実はこの道者、義経の命令でただ一人残った佐藤忠信の変装した姿で、宗徒を翻意させようと色々と言葉を尽くします。宗徒が去って行くと、静御前が白拍子の姿で現れ、都道者に変装した忠信と示し合わせて山に残り、靜は義経の忠心と武勇を訴え、舞を舞い、衆徒は舞の面白さに時を忘れてしまうのでした。

シテ 辰巳大二郎


能「邯鄲」

蜀の国に住む青年盧生は、人生に悩み羊飛山に師を訪ねる途中、邯鄲の里で雨宿りをすると、宿の主が不思議な枕を勧めます。粟の飯が炊ける間、横になった盧生の元に、楚国の帝の使が現れ、盧生を起こし、譲位の勅を伝えます。勧められるまま都に上った盧生は、栄華の限りを尽くし、在位五十年の宴では自らも舞を舞いますが、これはすべて夢中の出来事、覚めかけた夢を宿の主に起こされ、人生の儚さを悟って帰って行きます。横たわった寝床が、起き上がると宮殿になり、夢覚めるとまた邯鄲の里に…「一炊の夢」舞台版。

シテ 山内崇生

狂言「鬼瓦」

永らく在京の田舎大名、訴訟も無事解決し、これも信仰する因幡堂薬師のおかげと、帰郷するに先立ち薬師堂に参詣します。ふと目にとまったお堂の屋根の破風の上の鬼瓦のいかつい顔が、国許に残した妻に似ているのに気づき、懐かしさと恋しさのあまり、つい泣き出してしまい、家来の太郎冠者に慰められていそいで帰ってゆきます。鬼瓦と妻の顔がそっくりというのが狂言らしく古風でおおらかです。

◇午後の部◇2025年5月17日(土)午後3時半始

能「加茂物狂」

三年ほど東国に出掛けていた男は、都が恋しくなり帰って来ます。折から葵祭の最中、賀茂の明神に参詣すると、葵を笹に付けた狂女に出会います。昔、藤原実方が舞を舞った橋本の社に想いを寄せた女は笹を捨て烏帽子と長絹を着ると、夫を尋ねて東国に旅をした様を舞います。男はその様子を見ている内に、この女が都に残して来た妻であることに気づきますが、人目もあることと思い、妻も自分に気づくのを待って、かつて二人が住んだ五条の家に帰って行きます。

シテ 藤井雅之


能「船橋」

旅の山伏が上野の国佐野の船橋へやって来ると、里の若い男女に会います。二人は橋の建立のために勧進をしていました。謂れを尋ねられた二人は、昔この橋を通い路として逢引きをしていた男女があったが、そのことを嫌う両親に橋げたを外され、男が落ちて死んだという物語を詳しく語り、夕闇の中へ去って行きます。その夜、供養をする山伏の前に成仏を願う女と、執心のために悪鬼となった男が現れ、死んだ時の様子を再現し、成仏出来た事を喜び去って行きます。

シテ 関直美

狂言「鬼の継子」

準備中