宇治の里に立ち寄った諸国一見の僧が、山の姿や川の流れを眺めていると、老人に声をかけられます。僧が宇治の名所旧跡を尋ねても、老人ははっきりとは答えず、ただ宇治川の方に案内して平等院に僧を誘います。扇の形に芝だけが残っているのを不審に思った僧が尋ねると、老人は昔この場所で源三位頼政という武将が扇を敷いて自害した所と答え、自分は頼政の霊であるとほのめかして消え失せます。僧が頼政の跡を弔っていると、老体の武者姿で頼政が現れ、宇治川を隔て奮戦したが、敗れて自害するまでを語ります。
高野山の二人の僧が都に上る途中で、朽木に腰掛けて休む老女を見、その朽木が卒塔婆であることに気づき、別の場所に移動させようと言葉を掛けます。僧が仏教の教えを説き説教に掛かると、老女は僧の言葉を悉く論破して、ついには僧をやり込めてしまいます。僧に問われて老女は自らは小野小町のなれの果てであると明かし、現在の境遇を嘆き、さらには深草少将の霊が乗り移り、百夜通いの有様を見せますが、僧の弔いを頼み去って行きます。
紀州道成寺の鐘再興の日、女人禁制という触れがありましたが、一人の白拍子が能力を説得して供養の場に入ります。女は烏帽子を着けると乱拍子という特殊な舞を舞い、僧達が眠った隙に鐘に対する執心を見せ、鐘の下に入ったかと思う間に鐘を落として姿を消します。僧がこの寺と鐘にまつわる恐ろしい出来事を語り、鐘に向って祈ると、引き上げられた鐘の下に蛇体となった女が現れ、僧と戦いますが、最後は日高川に飛び込んでしまいます。恋慕執心を描いた名曲。
修行を終えた山伏は、本国に帰り祖父(おおじ)の家を訪れます。しばらく見ぬ間に祖父はすっかり年老いて、腰が曲がり、日々の暮らしに難儀をしている様子。そこで山伏は祖父の腰を、会得したばかりの行法によって祈り伸ばしてあげようと試みます。見事祈りが通じ、反り返るほどに腰が伸びた祖父ですが、行力が効きすぎてあまりにも窮屈だというので、今度は緩めてあげようと再び祈祷を始めますが…